ループの縫い目の末端の革が切れかかっている状態でございました。

また、持ち手に関しましても、一か所革が切れてしまっておりました。

そこで、今回はループ４か所と持ち手を新しく作成させていただきました。

さて、修理に際しまして、まず必要になるのが革の選定作業です。

革選びはなかなか難しいのですが、今回は幸いにも、ご依頼品にぴったりの革がご用意できました。

お客様はもちろんですが、私たちと致しましても、ご依頼品によく馴染む革が見つかるというのは大変に嬉しい事です。

当店では常時、多数の革をストックしております。

どんな修理にでもご対応できるよう、できるだけ多くの革を取り揃えておきたいと考えているからです。

ただ、全てのご依頼品にぴったりの革をご用意するというのは難しいのが現実です。

と言いますのも、茶系などは本当に僅かな色味の違いでも実際に合わせてみると違和感がでてしまうからなのです。

さらに今回のご依頼品のように表面に模様の加工（シボ）が施してある革となりますと尚更、革選びは難しくなります。

シボの革に関しては汎用性が低い事もあり、あまり革をご用意しておりません。

しかしながら、黒の革に限ってはご依頼が多い事や色の差異が目立ちにくい事もあり、何種類かご用意しておりました。

その中に今回のご依頼品にちょうど合う革がございましたので、その革を使用させていただきました。

作業と致しましては、元の持ち手・ループから型取りをし、それを元に新しいパーツを作成させていただきました。

その際、外観はよく似た革ですが、厚みや革の硬さは異なっている為、サンプルを作成し事前に仕上がりの雰囲気を確認致しました。

その後、さらに微調整をしながら作業を進めてまいりました。

革の質感がほぼ同じ物がご用意できたこともあり、非常に自然な仕上がりとなっております。

持ち手もしっかりと張りがあり安心してお持ちいただけると思います。

今回使用させていただいている革はシミや汚れに強くケアに神経質になることなく快適にご使用いいただけます。

どうぞ末永くご愛用いただけます事を願っております。